LINEスタンプ承認されました☆

アプリを作って、そのキャラのLINEスタンプを作ってみることにした。天使の女の子と、小悪魔の女の子。二人セットのカップル向けスタンプで、全8種類。「すき」「かまって」「てれる」みたいな、毎日のトークで使えるやつだ。
絵は描けない。でも、AIで画像を作ることはできる。だから、いけると思った。実際、1枚だけなら、すぐにできた。可愛い天使の子が、あっさり出てきた。

壁はそこじゃなかった。2枚目で、別人が出てきた。
「1枚描ける」と「8枚そろえる」は、別の問題だった
スタンプは、同じキャラクターが8枚ならぶ。当たり前だ。同じ子が、「すき」と言い、「えーん」と泣き、「やった」と喜ぶ。表情もポーズも全部ちがうのに、顔と設定は同じでなければいけない。
これが、想像の何倍も難しかった。
AIに同じ指示を出しても、毎回ちがう子が出てくる。髪の長さが変わる。目の色が変わる。翼が生えたり消えたりする。8枚ならべると、8人の他人が並んでいるように見える。これではスタンプにならない。
最初に思いつく解決策は、たぶんみんな同じだ。「1枚目の絵を"お手本"としてAIに渡して、それを元に描き直させればいい」。僕もそう考えた。画像を元に画像を作る、いわゆる img2img という方法だ。
理想は、こうだった。お手本を渡せば、同じ子のまま、ポーズだけ変えてくれる——。
現実は、こうだった。お手本を渡すと、ポーズまで固定された。構図ごとコピーされるので、表情もポーズもほとんど動かない。同じ子は出るけど、8枚とも同じ姿勢。今度は逆の問題だ。
「同じ子」を取ると「動き」が死ぬ。「動き」を取ると「別人」になる。しばらく、この二択の谷から抜けられなかった。
答えは、直感と逆だった
いくつも方法を試して、全部ボツにした。お手本の画像を渡す方法。キャラクターの特徴だけをAIに記憶させる専用機能。別の画像生成モデル。どれも「似てるけど動かない」か「動くけど似てない」のどちらかに落ちた。
抜け道は、直感と真逆のところにあった。
お手本の画像を、渡すのをやめた。 そのかわり、文章のほうに、そのキャラの設定を「全部」書いた。ピンクの短い髪、マゼンタの瞳、頭上の光輪、白い羽根、白いフリルのドレス、黒いリボン——毎回、一字一句そのままコピーして、指示の頭に貼りつける。そして、そのうしろに「今回だけ変えたいこと」を足す。
整理すると、1枚ぶんの指示は、こういう構造になる。
作りたい1枚
├─ 構図 全身・立ち姿 / ジャンプ …
├─ キャラ固定 ピンク短髪・光輪・白い羽根・白ドレス・黒リボン …(毎回まるごとコピペ)
├─ 体型 2〜3頭身の「比率」を表す言葉
├─ 差分 動作 + 表情(← ここだけ毎回書き換える)
└─ 画風 やわらかいアニメ塗り・キラキラ・無地の背景
ポイントは真ん中の二つだ。「キャラ固定」は毎回まるごと書く。「差分」はそこだけ変える。
なぜこれで解決するのか。しくみはシンプルだった。お手本の画像を渡さないから、AIはポーズを自由に発想できる。表情もポーズも、ちゃんと動く。いっぽうで、キャラの設定を毎回まるごと書いているから、顔と衣装は毎回そろう。自由は「絵を渡さないこと」から生まれ、統一は「言葉で毎回くり返すこと」から生まれる。
これは、今後動画を作る場合にも応用できそうなので概念は実験しておきたかった。

縛れば縛るほど、似てるけど動かない絵になる。手をはなすほど、動くけど別人になる。正解は、その両方をべつべつの手段で担保することだった。ポーズは手放し、設定はくり返す。逆のことを同時にやる。
ついでに、もうひとつ分かったことがある。「2頭身にして」「3頭身にして」と数字で指示しても、ほとんど効かない。AIは勝手にいつもの頭身に戻してしまう。効いたのは数字じゃなくて、体の部品を表す言葉だった。「足を長く、頭を小さく」と書けば背が伸びる。「頭を大きく、足を短く」と書けば幼くなる。頭身は数字じゃなくて、比率のことばで動く。ここは、僕自身の予想が当たった数少ない場面だった。
AIは、8枚を選んではくれなかった
方法が決まってからは、速かった。ひとつの言葉につき、4枚ずつ候補を出す。「すき」で4枚、「えーん」で4枚。奥行きやアングルで多少のブレは出るけど、キャラは崩れない。あとは、その中から一番いい1枚を、人間が選ぶ。
ここが、意外と本題だった。選ぶのは、AIじゃなくて僕だ。
たとえば「ありがとう」のスタンプ。何枚出しても、しっくりくる「ありがとう」の絵にならなかった。手を合わせて拝む感じも、お辞儀も、どれも決まらない。
そこで、発想を変えた。「ありがとう」の絵を探すのをやめて、別の絵に別の言葉を乗せた。 両手を上げてバンザイしている、満面の笑みの1枚。これはむしろ「今きたよ!」の到着テンションだ。だから言葉を「まったー?」に変えた。待ち合わせで、遅れてきた相手に言うやつ。カップル向けなら、こっちのほうが断然ハマる。
「いい絵に、いい言葉を探す」んじゃなくて、「この絵なら、どの言葉が生きるか」を考える。この編集みたいな判断は、AIには渡せなかった。AIは候補を無限に出してくれる。でも、その中から「これだ」を選び、意味を与えるのは、最後まで人間の仕事だった。
8枚そろった。背景を透明に抜いて、文字を白フチで乗せて、サイズを整える。天使の子はピンクの文字、小悪魔の子はグレーの文字。ここまでは、順調だった。
AIが変えたのは、「描く力」じゃなかった
今、スタンプは審査に出したところだ。通るかどうかは、まだ分からない。
作り終えて、一番はっきりしたことがある。AIは、僕に「絵を描く力」をくれたわけじゃない。くれたのは、「同じ子を、何度でも作り直せる力」だった。1枚目が別人になっても、8枚がバラバラでも、何度でもやり直せる。失敗が「できない」で終わらず、「もう一回」に変わる。これが、いちばん大きかった。
そして、変わらなかったこともある。どのポーズを選ぶか。どの言葉を乗せるか。どこで「これでいい」と止めるか。決めるところは、ぜんぶ手元に残った。AIは候補を無限にくれるけど、無限の中から一つを選ぶのは、やっぱり人間だ。
絵が描けなくても、キャラクターは作れる。ただ、それを「自分のキャラ」にするのは、生成した瞬間じゃなくて、選んで、名前をつけて、言葉を乗せた瞬間だった。
あなたなら、どんなキャラクターに、どんな言葉を言わせますか。
天使と小悪魔のスタンプは、審査が通り次第お知らせします。



